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友人の絶叫に、私は大笑いしながら、作業に戻った。 やがて教室の喧騒が、そっくりそのまま運動場に移った。 仮装していたクラスメートは、着替えることなく次々と駆け足で降りて行く。 その中に、どでかいカボチャを見つけた。 歩行訓練の成果もあってか、廊下を走るその姿は、驚くほど速かった。 運動場から窓を経由して嫌でも届く、賑やかなさざめき。 教室の静けさは、それによって強調される。 でも今は、なんだか心地よい。 しばらくはここでひっそり、世界から孤立しよう。 ふうーっと大きく息を吐いて、私は教室を振り返る。 設置した椅子も机も、面白いくらい雑多に歪んでいて、片付けがいがありそうだ。 辺りに散らかるゴミにも、立ち込める無駄に甘い香りにも、なぜだか腹が立たない。 暮れゆく秋の空が、黄金色に輝く田畑が、赤く染まる山肌が、きっと私の心を優しくしているのだ。 ひとつひとつ、丁寧に片付けよう。 みんな自分の自由時間を犠牲にして頑張ってくれたんだ。 感謝を込めて、心から。 ひととおりの片付けを終えた頃、運動場から爆音が轟いた。 のんびり窓から見下ろすと、ライヴが始まったところだった。 みんな楽しそう。 踊ってる、飛んでる。 手を繋いでる、寄り添って笑ってる。 素敵だな、羨ましいな。 なんて。私にも、やっぱりそんな感情があるんだな。 窓際の席に頬杖をついて、本当はあまのじゃくなだけの自分に気付く。 仮装しているクラスメートは、とても目立っていて。 カボチャを探すと、すぐに見つかった。 「……なーんだ、いるんじゃん」 カボチャの横に寄り添う女子。 見覚えはないから、同じ学年じゃないのかも。 残念だけど、友人に教えてあげなきゃ。 見事に予感は外れたよ。
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