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本当は私は、期待していたのだろうか。
……いや、誤魔化しちゃいけない。
期待していたのだ、確実に。
2年に上がってクラスメートになった鶴田。
いつも席が近くて、唯一クラスで話せる男子。
確かにそれだけの関係だけど、気になっていた。
話し掛けられると嬉しかった。
自分から話し掛けた男子は鶴田が初めてだった。
もし私が誰かに恋をするならば、鶴田なのかも知れないとさえ、思っていた。
「でも、ちゃんと彼女いるんじゃーん……」
運動場を見下ろして、何となく叫びたくなる。
「……ヘルプミー」
こんな小さな声では、誰もこっちを見上げない。
「ヘルプミーッ!!」
少し頑張ったけれど、無反応。
届くわけがない。
「…………」
馬鹿らしくなったので、私は立ち上がった。
教室内は片付いたが、まだ細かな作業が残っている。
みんなが稼いだお金を、大切に計算しなければ。
最後に色々な意味を込めて『サヨナラ』を告げようと、カボチャに視線を向けた時。
私は目を疑った。
「……は?」
カボチャが頭から外れていた。
両手に抱え持っていた。
でも。
「誰よあいつ」
カボチャの持ち主は、鶴田ではなかった。
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