風鈴と夏雨と

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 ――思い出したいこと。  それは、ある。この十五年間、ずっと心に引っかかっている少年時代のある夏の出来事。  透の十歳のころの記憶には、欠落があった。  夏休み。  祖母の家。埃の匂いのする古い骨董品。  涼風に揺れる風鈴。昔ながらのアルマイトのやかんで煮出した麦茶。  よく一緒に遊んだ近所の女の子。  ……近所? その子は本当に近所の子だったのだろうか。
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