非正規大統領

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 翌朝、旅の疲れもあって寝坊した。八時五十分。朝食もとらずに身支度をする。  九時前にパソコンの前に座り、スイッチを入れる。パソコンの画面にロームの顔が現れた。 「お早うございます、大統領」  大統領か……たとえ非正規の雇われ公務員だとしても、耳に心地よい。いい響きだ。 「お早う。補佐官」 「昨日はよく眠れましたか」 「ありがとう、ぐっすり眠れたよ。それからピザ美味しかったな」 「ピザの配達は補佐官の仕事じゃありませんから、よけいなことです」  ロームは俺を睨みつける。 「そりゃすまんな」 「次から配達は私を指名してください。歩合制ですから」  何だこいつ、ちゃっかり仕事してるじゃないか。 「分かった、そうするよ」 「えーと、今日のスケジュールですが、決裁文書があるので決裁をお願いします。まず『新国土交通システム計画』です……」  ロームは次々と決裁文書を提示し、俺はそれを機械的に承認していく。文書の中味なんて理解できないし、AIが決めたことは間違いないはずだ。 「決裁はこれで終わりです」 正午前にロームは言った。 「今日の仕事はこれで終わりか?」 「はい。でも仕事が無いからと言って、遊びに出かけてはいけませんよ。一応五時までは仕事ですから。近所のコンビニに行ったりするのは認められてますけどね」 「分かったよ」  その日はテレビを見て過ごした。こんなに楽をして金を貰っていいのだろうか。
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