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マンツーマンレッスン
それからあたしと玲緒先輩のマンツーマンレッスンの一週間が始まった。
玲緒先輩は演技が上手なこともあって指導もものすごい上手、冒頭の告白シーンだけでなくすべてのシーンをまんべんなく教えてくれた。
だけど、マンツーマンレッスンの時間は部活が終わってから最終下校時刻までの三十分だけ。
とにかく、時間がなかったのは確かだ。
だからあたしはとにかく必死に練習した。
「ふぅ、だいぶうまくなってきたね。後は告白のシーンだけかな、セリフも頭に入っているみたいだし」
玲緒先輩がフッと笑う。
その瞬間、キュッと胸が苦しくなった。
あぁ、この笑顔をずっと見ていたい。
でも、あたしとじゃ釣り合わないんだろうなこんなかっこいい先輩。
多分、もっと素敵な先輩と付き合ったりするんだろうな。
もしかしたら、後輩かもしれないけど。
演劇の中の自分はうまく言っても現実の自分はそう、うまくは行かない。
それが今のこの複雑な心模様のように――。
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