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次の休日、迎えに来たリチャードに連れられて徒歩で街に向かう。
どこへ連れて行かれるのかはまだわからないものの、店とだけは聞いている。貴族や富裕層向けの店が建ち並ぶエリアに入っていき、しばらくすると彼が前方を示しながら笑顔で振り向いた。
「あの店だ。先月できたばかりの喫茶店だから、おまえはまだ知らないだろう? 紅茶にこだわってるらしくて、めずらしい茶葉がたくさんあるし、淹れ方にも妥協がなくて美味いんだ」
紅茶が好きなアーサーに喜んでもらおうと思ったのだろう。その健気さが、不覚ではあるがすこしかわいいと感じてしまった。もちろん表情にも態度にもいっさい出さなかったけれど。
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