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その喫茶店は、一見、店舗というより邸宅のようだった。
看板すら出ておらず言われなければ喫茶店と気付けないだろう。中もまるで談話室のようで、暖色の灯りのなかでゆったりと落ち着けるしつらえになっている。アーサーたちは奥のほうに案内された。
「お伺いしていたとおりでよろしいですか?」
執事姿の男性店員がそう尋ねると、深く椅子に腰掛けたリチャードはよろしく頼むと応じ、その店員が下がったところで正面のアーサーに向きなおる。わかりやすく得意げな顔をして。
「俺のおすすめを出してくれるよう頼んであるんだ。きっとおまえも気に入ると思う」
「それは楽しみですね」
彼が強引なのはいまに始まったことではない。
アーサーとしてはメニューを見てみたかった気持ちもあるが、またいずれ来ればいいだろう。いまは彼がそこまでして勧めるものに純粋に興味を持っていた。
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