晴夏

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 ミーティングは90分ほどで終わった。翔と美紀がこの後講義があるということもあったが、今日が共同研究の最初なので、この研究でいったい何を対象とするのか、役割分担はどうするのか、次回からどんな資料が必要になるか、など研究の前段階の準備を話し合っただけだったからだ。本格的な研究は次回からとなる。  今日はもう特に大学に用はないので、帰り支度をしていると、隣りで美紀と晴夏が話しているのが聞こえた 「私次の講義で今日は終わりだから、その後どっか遊びに行かない?」  と美紀。 「ああ……、今日はゴメン! 家の用事あって、今日は無理だわ」 「へえー、珍しいこともあるもんね。晴夏が用事だなんて」 「うん、ほんっとにゴメンね。また今度埋め合わせするから、ね?」 「はいはい。別にいいわよ。私もめっちゃ暇ってわけでもないし。自分の研究やっとこ」 「ありがとう、美紀。ほんとゴメンねー」  こんな会話が聞こえてきた。ということは晴夏も、今日はこのまま帰る……。確か途中までは一緒の電車のはずだったから、それまでなら……やった!   嬉しさが込み上げてきたが、それと同時に、甘酸っぱい緊張感が突き上げてくるようにやって来た。俺から、誘うのか……? 今日一緒に帰らない?的な? え、なんであんたと?ってならない? 考えれば考えるほど不安が押し寄せてきて、さっきまでの嬉しさがぶっ飛んでいった。ていうかそもそも、なにあたしらの会話盗み聞きしてんの、きっもって思われないか。俺が女子だったら盗み聞きして誘ってくる男とかちょっと引くかも。てことはここで俺が声をかけたらやっぱ晴夏も同じように……。グルグル堂々巡りのように頭が回っていると、急に背後から、 「おーい、蒼! 今日大学前にできた新しいステーキ屋オープンなんだってよ! 昼飯の時間に行こうぜ。だから次の講義が終わるまで本屋でも行って時間つぶしといて……」 「うるさい! 今日は予定あるんだ、少し黙ってろよ!」  翔に首にかけられた腕を強引に振りほどき、翔をキッとにらみつけた。翔は後ずさりして、 「お前、何かキャラ違くねえか?」  言われて蒼はハッとした。あまりに夢中になりすぎて、反射的に大声を出してしまった。美紀も晴夏も、怪訝な目つきで、蒼を見つめている。……やってしまった、と蒼は思った。
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