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「……それから、運動部への応援などがあります。勝ち進んでいる大会への応援に行きます。できる範囲で応えていきたいので、体育祭と文化祭の入場門の制作は、やる方向で話を進めます。ここまで一方的に話したけれど、質問や意見があれば、言って」
全員の様子をうかがった。
一年生の女子ふたりは、肩を並べて資料を見ている。似た者同士の友達だからか、同じようなボブヘアー。
そして女子から離れたところに一年生の男子。度の強い眼鏡をかけた子で、いつもおとなしい。
「一年生は、なにかない?」
一年生男子がもごもごと「考えています」と言った。急かしすぎただろうか。
中島は千影と目が合うと、低く手を挙げた。
「部長。先に俺からいい?」
「どうぞ」
「去年は十二人いたけれど、今年の部員数は六人だ。少人数になったから、体育祭と文化祭の入場門は、併用で使えるものを作ろう。……秋には自分たちの制作もあるんだから」
千影も考えていたことだった。
ただ部長の自分から言うのは、可能性をつぶすような気がして、やめておいた。
「そうね。検討してみようか」
中島の案をホワイトボードに書き写す。
「あとは運動部の応援だけど、これ逆に、もっと派手でもいいんじゃないか」
「え?」
マーカーを持つ手が止まった。一年生の女子ふたりが、千影と同じくらい驚いている。
「何年か前、野球部が甲子園に出場したときは、横断幕を用意したらしい。そういう美術部らしいやり方は、どうだろう」
「待って。案を出してくれるのは助かるんだけど、それって負担じゃない?」
強く言ったので、中島がけげんそうな顔をした。機嫌を損ねたかもしれない。
「まだ意見を出しただけだ。つっかかるなよ」
「どこの部にも同じことをするとなると」
「……それは行けるところだけでいいだろ。暇なときとか、あとは、誰かが個人的に行きたい試合とか?」
「………。なにか、言いたいの?」
「別に」
中島が黙る。
気まずい空気が場を占めたところで、一年生の女子ふたりが、同時に手をあげた。
片方を当てると「やっぱりあんたが言って」と、当てなかったほうを肘でつついている。
「言いづらかったら、ふたりで発言してくれてもいいよ」
うながすと、彼女たちの顔がぱっと輝いた。
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