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纏まった長い黒髪が彼女が手に持つランタンの火に照らされる度に、
その後ろ姿は少年から遠ざかっていく。
雨島は地下の雰囲気に飲まれているらしく、その足取りは心もとない。
ジメジメとして冷たい、
石造りの棺桶がそのままに拡大されて伸ばされたような廊下の先には、
鉄扉に区切られた小さな部屋があって、そこに死体は運び込まれていた。
部屋には鉄格子のある通気孔が開けられていて、
そこから薄い月影が落ちていた。
雨島には豆電球が垂れ下がっているのが見えたけれど、
四光は明かりをつける気配がない。
ただこの月の冷たい光だけが真実を詳らかにしてくれると、
彼女はそう信じているのだ。くだらない迷信の類。
あるいは、自らを律するための咒いか。
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