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「素敵、暖かい気持ちになる」
昨日から疲れ切っていた心が自然と軽くなったような気がした。
「これ、瀬川さんにあげます」
すると耳元で聞こえた言葉に驚いて勢いよく振り返る。
そのとき私の後ろで少し屈んで絵を見ていたせいか彼の頬に鼻がかすりそうになり、予想以上に近かった距離にドキッとした。
「あ、すみません」
「ううん」
お互い後ずさりながらぎこちない会話を交わし、変な空気が流れる。
私は何か話題はないかと慌てていたら、いつまでも冷静な彼が手元から絵を取り上げフッと笑みを見せた。
「名前、晴れの日って書きますよね。これ瀬川さんみたいだなって思ったらどうしても早く渡したくなって」
鼻をすすりながらまじまじと絵を見る横顔は穏やかで、目が離せなくなった。
「元気になる絵だからプレゼントします」
「なんで」
「だって昨日様子おかしかったから。心のケア必要かなって」
胡桃ちゃんから散々牽制されたことなどまるっきり忘れ、どうしようもなく嬉しくなった。わざわざ私のために来てくれたんだと思ったら不覚にもときめいている自分がいた。
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