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私はお礼にホットコーヒーを淹れる。
フローリングの床で胡坐をかく彼の前に置くと、途端に団を取るようにカップに手を当てる。相当寒かったのだと可愛くなり笑みがこぼれた。
「余計なお世話かもしれないですけど、年下でも一応二十年は生きてきてるんで。話相手くらいにはなると思うんですけど」
コーヒーのカップを見つめながら突然優しさを見せてくる彼は、恥ずかしそうに目を逸らす。私は一瞬迷いながらもなぜか甘えたくなる空気感に負け、隣にゆっくり腰かけた。
「話し出したら、随分長い話になるんだけどそれでも聞く気ある?」
「自分はお暇な大学生なんで。仕方ないから付き合ってあげます」
冗談交じりに笑ったら、彼も意地悪く返してくる。
私は覚悟を決めこの半年間誰にも話せなかった千秋さんとの出来事を赤裸々に打ち明けた。
過去を何ひとつ知らない創くんだからこそ自然と話せてしまったのかもしれない。彼ならまっさらな気持ちで聞いてくれるような気がした。
「私は父の呪縛から逃れられないの。あの人の差し金で近づいてきた彼にずっと騙され続けてた。挙句、実は婚姻届も出してませんでしたなんて何を信じたらいいか分からなくなった」
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