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「好きでもない相手に騙されたからって半年も引きずるもんなんですね。ど新人の時にも割ってなかった皿割っちゃうくらい一回の連絡で動揺して」
ズバッと確信をついてきて痛いところを突かれる。
それは私が気づかないように目を逸らしていた事実だった。
「はっきり言うねえ」
私はあまりの動揺に笑い飛ばすことしかできなかった。
しかし上手く笑えない。でも笑っていないと蓋をしたはずの気持ちが溢れ出しそうで耐えられなかった。
「ハタチの若造が生意気言ってって言われるかもしれないですけど、ちゃんと言葉にしなきゃ人の気持ちなんて分からないんですよ。逃げてきたまま知ろうともしないなんてもっての外です」
「創くん」
「偽装夫婦の真似事でも何でもしに行って、もう一度ちゃんと話し会ってくるべきだと俺は思います」
いつも私の前では落ち着いていて〝自分は〟なんて大人ぶっていた彼が、私の前で初めて〝俺は〟と素になったように感じる。その変化に驚きつつ、背中を押された私は肩の力が抜けた。
「なんすか?」
明らかに自分よりしっかりしている彼には正直参ったとジッと見つめていたら、目が合って怪訝な顔を向けられる。
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