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「〝ハタチの若造が〟って私たちそこまで年違わないと思うんだけど?」
「え。ああ、えっと、すみません」
気持ちが軽くなり心に余裕が出てきた私はそんな風に誤魔化しながら、焦る彼を見てクスッと笑う。
「元気出た。ありがとう」
私は麦茶を一気に飲み干し大きく息を吐く。
話してよかったと心の底から思い、前よりも随分楽に呼吸ができるようになった。
「焼肉」
「え?」
「食べたいものです。奢ってくれるんですよね?」
和んだ空気から一転、思い出したように言う創くんの口から飛び出した重めのワードがうっと胃にのしかかる。
「私、まだ一食目なんだけど」
「俺もです」
「うわあ、そうなのね。若いな」
顔を引きつらせ立ち上がる彼を恐る恐る見上げる。
「行きますよ。大して年違わないんじゃないんでしたっけ?」
しかし最後は一発KO負け。
何も言い返せなくなるくらいの渾身のパンチを食らった気分で思わず笑えてきた。
「そういえばそうでした」
私は財布を手にとり玄関に向かう彼の背中を追いかけた。
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