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「瀬川さんが言うには結婚するのが出資の条件だったわけですよね?」
「うん」
「だったら逆に婚姻届出しませんか。条件にした意味がないじゃないですか。親の圧から逃れるためにも向こうは誰とでもいいから結婚したかったはずだし、わざわざ出したフリなんてする意味がよく分からないんっすよね」
創くんの話は的を得ていた。
考えれば考えるほど引っかかる場所は多かったのに、それでも知るのが怖くて訳がわからないの一言で片付けてしまった。
私は彼の言い分に何も言い返せない。
「もうひとつ。その人と会ったのも偽装結婚の話が出たのも、まだお見合いの話が生きてたときなんですよね。それならなんでお父さんの差し金だって思ったんですか。つじつまが合わない気がするんですけど」
そのあとも彼は探偵のような口ぶりで話を続けた。
「つまりは、お父さんへの不信感がそう思い込ませただけなんじゃないかってことです」
黙り込む私はこくりと一回頷いて水を飲む。
「そもそも前のお見合い相手がいたのに新しい人を送り込む必要ってあります? 偽装結婚しようって言われた後にお父さんからお見合い相手と結婚しろって言われてるんだから、普通に考えればおかしいことくらい」
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