冷凍保存

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冷凍保存

私がクライオニクス施設に着き、受付へ向かうと100人以上の人達がいた。最近では、こんなに人が集まっているところを見る機会は無い。『牛ウイルス』の影響で冷凍保存希望者がこんなに多くなるとは……。 20分程待った後、女性スタッフに誘導され、私は全裸で専用カプセルに入った。顔の部分だけは透明になっていて外が見える。哲彦が担当だったら良かったのにって思ったけど、全裸になるから当然、女性スタッフだよね。 そんな事を考えていた時、近付いてくる男性スタッフがいた。哲彦だ! 「静香、問題は無いか?」 「うん。最後に哲彦に会えて嬉しいわ」 「今度会う時は『牛ウイルス』が無くなっている時代だな」 「……哲彦……死なないでね」 「ああ、必ず俺が静香を解凍するから」 「……お願いね」 「じゃあ、時間だから」 「分かった」 私は目を閉じて冷凍を待った。最後に哲彦と会えた喜びで、目には少し涙が溜まっているのが分かる。でも、やっぱり怖い。冷凍される恐怖と、2度と意識が戻らないかも知れないという不安で呼吸が荒くなっている。今度、目を醒ますのは何年後だろう……。10年? 20年? もしかすると100年以上? そう考えると、解凍されても哲彦とは会えないかも知れない。哲彦には「私の事は忘れて他の女性と幸せになって欲しい」と言ってあげたかったけど、結局、私のエゴで言えなかった……。 ブウウウウーン……シュー…… カプセルに何らかの気体が入ってきたのを感じる。麻酔なんだろうか。私はゆっくりと意識を失った……。
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