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解凍
………………………………
ザーーーーー……
ん? 雑音が聞こえる……。
意識が戻ったみたい。まだ、目は見えないし、体の感覚も無く、朦朧とする中、解凍されたんだと理解出来た。という事は、『牛ウイルス』に対して何らかの特効薬が出来たって事。良かった……。
「うう……」
「えっ?!」
私が言葉にならない声を発したら、女性っぽい声で驚いたような反応が返ってきた。
「今、喋らなかった?」
「うう……うう……」
私がうめき声をあげると、頭の辺りを触れられたような気がした。温かくて気持ち良い。
「静香……」
この声は……もしかして哲彦?
「うう……」
「まだ眠たいだろう? ゆっくりお休み」
哲彦……良かった、まだ生きていたのね。
私は安心したのか、再び眠りについた……。
◆2130年1月、『牛ウイルス』の猛威は止まる事を知らず、日本では遂に、クライオニクス施設やウイルス研究者への食糧供給がストップした。安全な食糧が底をつきそうだという事もあるが、配達員が奪って逃げてしまい届かないのだ。残念ながら、ワクチンや特効薬の開発は間に合わなかった。これにより、数少ない生き残りの人類も飢えで次々と亡くなっていった……。だが、それから10年後でも少数ながら生き延びる人達がいた。クライオニクス施設の人々だ。◆
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