凡庸の異常

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次の日、オヤジのバイタリティはすごかった。 俺に面接時間について電話させた。 「面接したいって人がいるんですけど」 「OK、店長とジカンとれるよ」 外国人の先輩に許可を取ってオヤジの面接の時間を取ってもらった。 面接当日、オヤジはかつらをかぶり、スーツを着て、無精ひげを剃った。 その結果、50代後半の執事が出来上がった。 思っていたよりもダンディに仕上がっている。 言いたくはないが――カッコ良い。 「じゃぁいくか」 面接を1時間足らずで終わらせた結果、アルバイトで4時間という短時間で採用されたのだった。 「お前はしばらく出勤なしだからな」 「え?」 学生の本分は勉強だから親の収入を圧迫するほどの労働はさせるわけにはいかない。 「その代わりにオヤジがでるといいたいのか?」 「そうだ。おとなしく勉強しておれ」 確かに勉強の復習をする時間が無くなってきていたところだった。 ベッドにごろんと横になるとひどく安心する。 こんなにも緊張していたんだと実感する。 日付けは8月の中旬。 まだ夏休み。オレの学校はめずらしく9月1日からだ。 「バイト以外にしたいことかぁ」 何だろうか? 勉強もしている。課題も3日で終わらせることができそうだ。あと俺のしたいこと。……なんだろう。 友達誘ってゲーセン。 カラオケ オンラインのゲーム。 「執事さんって腹筋とか割れていないんですか?」 照れながらも気ワイドい質問をしてきたとあるお嬢様を思いだした。 「あれには困ったなぁ」 オトコはやっぱり筋肉質のほうがいいのだろうか? とりあえず腹筋10回してはみたが、そんな程度では変わらないみたいだ。 「なぁ、男って筋力あるほうがいいのかな」 電話したのは幼馴染でイケメンの柊。 「そりゃあるほうがいいだろ。俺の参考にしている動画を送ってやろうか?」 「頼むわ」 リンクされたサイトにアクセスしてみるとキャンプに入隊というタイトル。 5分程度の動画だが、何分かしてみるとあせがびっちょり。 いち、にー、さん、し。 これはハマるな。 べっとり汗をかいたら風呂にはいって、リセット。 髪の毛が乾く間は英単語の勉強をしてた。  また動画を見て、じっとり汗かいたら風呂にザッとはいって、 英単語の勉強。 「スポーツドリンクは電解質は取れるけど、あんまりとると太るからな」 水とレモン果汁でドリンク作ったり、水分補給はしっかりとしないとな。 食べ物は鳥の胸肉と卵とサラダ。 「たんねぇー。腹減ったわー」  体重計に乗って体脂肪を図ってみた。 腹筋がうっすらでも確認できる体脂肪率ってどのくらいなんだよ。 わっかんねーけどスーツが似合う大人になりたい。
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