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フランツ王子
「ニコラさん」
歩いているところを呼び止められ、振り向くとフランツ王子が物陰にいた。フランツ王子は現在10歳。王には何人も子供がいると噂されているが、正式な子はフランツ王子ただ1人。
「王子、どうされました?」
「ちょっと、僕の部屋で話しても良いかな?」
「分かりました」
王子は周りを気にしている様子だ。恐らく、誰にも……と言うより、王に知られたく無い内容なのだろう。
私は王子の部屋に招き入れられた。私は、王子が産まれた時からの長い付き合いで、王子は私の事を信頼してくれている。親戚のおじさんのような存在だと思ってくれているのだろう。
「ニコラさん……戦争止められないかな……」
王子は悲しそうに言った。
「王子……お気持ちは分かります。ですが、これが最後の戦争になるでしょう」
「でも、今までと比べものにならないぐらい死者が出るよ。第一、戦う必要が無いじゃないか。バラク王は絶対に攻め込んできたりしないんだから」
「……」
私は何も返せず黙り込んでしまった。王子の言う通りなのだから。と言うよりも、私の意見と全く同じなのだ。
「もう、誰も死んで欲しくないよ……。ニコラさんだって、今度は生きて帰れないかも知れない……」
「……そうですね……」
「何とか出来ないかな? 僕に出来る事は何だってするよ」
「分かりました。何とかします」
「ホント? どうするの?」
「これから考えます。取り敢えず、戦争は何としてでも止めます」
「ありがとう、ニコラさん。頑張ってね」
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