好機

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好機

王の部屋に入ると、私とジャンは王を前にして片膝をついて待つ。王は椅子に腰掛け、リラックスして雑談から話し出した。 私は、とにかく横目でジャンを注視していた。ジャンに隙が出来た時、王を襲うつもりだ。 緊張で身体が震えるのを何とか抑える。鼓動が2人に聞こえてしまうのではないかと思うぐらい高まっている。 「ジャン、ニコラよ。明日の戦いは、これまでに無い死闘になるだろう。どんな汚い手を使ってでも勝たなければならない。神を(あざむ)いてでも勝ちに徹しようと思う。お前達もそのつもりで戦え」 「はっ!」「はい」 「勝つのは当然として、我が軍の被害を最小限に抑えなければならない。何か良い案はあるか?」 「はい、ございます」 ジャンは凛々しい顔で王に返事した。 「何?! ジャン、言ってみろ」 今だ!! 王はジャンに耳を傾け、ジャンは作戦を伝えようと、そちらに集中している。こんなチャンスは無いと私は素早くダガーを抜くと、左足を強く蹴り、一気に王との距離を詰める。私は王の右首元を狙い、右手を振り抜いた。 バシュッ ダガーは王に突き刺さった……が、狙いの頸動脈を外し、肩に突き刺さってしまった。 「ニコラ……貴様!」 王が私の不審な動きに気付いて動いた為に、狙いがズレてしまったのだ。私の作戦は失敗した。だが、まだ諦める訳にはいかない。私は構わずダガーに力を込める。だが、王の必死の抵抗で膠着(こうちゃく)状態になってしまった。 「ジャン!」 王がジャンを呼んだので私はジャンを見る。ジャンは既に自分のダガーを手に取り私に向かい突っ込んできた。 終わった……。フランツ王子申し訳ありません……。 ジャンの振り下ろしたダガーは頸動脈に深く突き刺さり、床に鮮血が滴った。 そして、ゆっくりとが床に倒れ込んだ。王は、あまりにも急な出来事に一言も発する事無く動かなくなった。
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