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言質
「ジャン? どうして……」
「ニコラさん、王を殺して自分も死ぬつもりでしたね。そうは、させません。王を殺したのは私です」
ジャンが何を言っているのか、意図がよく分からない。
「我々は主君を討つという、最も忠義に反する事を犯したのだぞ?」
「いえ、我々は王の指示に従っただけです」
「何をバカな……」
「先程、王は言いました。被害を最小限に抑えよと。神を欺いてでもと。私は神と同等の王を欺いて戦争を無くし、被害を最小限に抑えました。」
「……」
「ニコラさんは死んではいけません。もちろん、私も死にません。王の命令に背く事になります。被害は最小限に抑えないといけませんから」
「……」
「直ぐにガルブ国へブオナパルテ王の死と、2度と戦争をしない旨を伝えましょう。そして、フランツ王子の即位式の準備をしなければいけません」
「皆には我々が王を殺したと伝えるのか?」
「それも正直で良いと思いますが、皆には、ブオナパルテ王は自殺したと伝えましょう。民の命と平和を優先したいが、プライドが邪魔をしてバラク王と仲良くやっていけそうになかったからだと。王の株も上がるでしょう。不審に思う部下が殆どでしょうけど、私達2人が王を討つとは考えられないですし、戦争も無くなって平和になるのであれば深く調べたりしないと思います」
翌日、ガルブ国へ使者が送られ、戦争の放棄とブオナパルテ王の死、そして、フランツ王子の即位式を行なうという事が伝えられた。ガルブ国民はもちろんの事、シャルグ国民も大変喜び、即位式にはバラク王も参加して盛大なものとなった。
こんな日が来るとは思いもしなかった。兵士達は敵味方関係無く、宴会を楽しんでいる。さすがにバラク王と、その周りの部下は警戒を解いていないようだが、それも数日の内に打ち解けるだろう。
戦争の時代は終わったのだ……。
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