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「さやさんはおかしな人ですね」
「あらそうかしら? 田本さんこそ麗奈さんをいじめることに生き甲斐を持っていたなんておかしな人ですよね」
さやさんは口元に手を当ててクスクスと笑った。
「……それは過去のことですからね。今は誰もいじめていないですよ」
「それは田本さんにとっては過去かもしれないですけど麗奈さんは田本さんにさいじめられたことを今も思い出して苦しんでいるのかもしれないですよ」
「そ、それは……」
考えたこともなかった。
「ほらね。田本さん、あなたは罪人なんですよ。田本さんは罪人ですよ! 田本さんは罪人ですよ! 田本さんは罪人なんですよ!」
わたしのことを罪人だと言って繰り返し叫ぶさやさんはまるで不気味な悪魔みたいだ。
「田本さん、わたしのことを悪魔みたいだと思っているでしょう? でもね、中学時代の田本さんこそ悪魔みたいだったと思うわよ!
その罪は消えないんだからね。自分の胸に手を当ててよく考えなさい」
さやさんはそう言ってわたしの顔を鋭い目つきでじっと睨んでいる。
「……」
麗奈は今もわたしのことを恨んでいるのだろうか? そんなこと考えたこともなかった。だけど……。
だけど、わたしにだって思い出したくない辛い過去がある。
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