第四章 緑川麗奈

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「エビピラフセットをお願いします。あ、飲み物は紅茶をお願いします」 「エビピラフですね。お飲み物は紅茶ですね」  店員さんはにっこりと笑いながら復唱した。 「はい」 「では、お待ちくださいね」  うふふと笑いながら店員さんは厨房に戻った。  笑顔の素敵な店員さんだなと微笑ましくなりながら何気なく見た壁に  『さや荘へようこそ。さや特製のモーニングセットが無料ですよ』  と書かれている貼り紙が貼られているのが目に入った。さや荘て何だろう? どうしてか分からないけれどそのさや荘に住んでみたいなと思った。モーニングセットも気になる。そんなことを考えながらぼーっと貼り紙を見ていると、 「お待たせしました」  店員さんがお盆にエビピラフとサラダと紅茶を載せてやって来た。 「美味しそうですね」 「うふふ、ありがとうございます。きっと美味しいかなと思いますよ。では、ごゆっくりー」  店員さんはエビピラフセットをテーブルに並べ厨房に戻ろうとした足を止め踵を返し、 「お客様、ポスターを眺めていらっしゃいましたがさや荘に興味がありますか?」  そう言って店員さんは天使のような微笑を浮かべた。 「あ、いえ。何となく見ていたんですがモーニングセットが無料って珍しいなと思いまして……」  わたしがそう答えると店員さんは、「ふふふっ、さや特製のモーニングセットは好評ですよ。良かったら検討してくださいね」  店員さんはにっこりと微笑みを浮かべ今度こそは厨房に戻った。  
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