第四章 緑川麗奈

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 エビピラフはとても美味しくて懐かしい味がした。お母さんが作ってくれたエビピラフの味とちょっと似ているかな?  わたしは緑川麗奈。二十五歳だ。特に新しい名前ではないけれど麗奈という名前がわたしは好きだったのだ。なんだかお嬢様ぽくて素敵だなと思っていてこの名前に誇りを持っていた。  それなのに……。  あの子と同じクラスになってこの大好きだった麗奈という名前が嫌いになってしまった。わたしは悲しくて泣きそうになったけれど教室の席ではぐっと耐えた。  だけど家に帰り自室に戻るとワンワンと泣いた。悔しくて悔しくて堪らなかった。田川和子が憎くてどうしようもなかった。  そうなのだ。中学三年生のあのクラスで田川和子は女王様みたいだった。田川和子と同じクラスになったせいでわたしは自分の名前が好きから嫌いへと変化していった。  和子というまるで昭和初期のような名前を持つ彼女はわたしの麗奈という名前が羨ましかったみたいだ。 「麗奈ちゃんって名前は似合わないわよ」と言って和子はクスクスと笑った。  名前のことだけでは済まず和子はわたしのことをいじめた。  なぜだかそんな中学時代の嫌な思い出を思い出してしまった。
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