第四章 緑川麗奈

7/22
前へ
/180ページ
次へ
   それから一週間後のよく晴れた日。わたしはさや荘に引っ越した。  どうして自分がさや荘の住人になったのかよく分からない、このさや荘にぐぐーっと惹かれここに住みたいと強く思い気がつくと賃貸借契約書にハンコを押していたのだった。  さや荘には不思議な力がある。ううん、森口さんに不思議な力があると言った方が正解だろうか……。  今日からわたしはこのさや荘の住人になるのだ。 「さや荘、今日からよろしくね」  わたしは新しい住処に挨拶をした。すると、こちらこそよろしくと部屋が挨拶を返したように感じ不思議な気持ちになった。  きっと気のせいだよねとわたしは笑い部屋の中に山積みにされたダンボールを片付けることにした。引越しなんて何年ぶりかなと思いながらわたしは荷物を解いた。  その時、分厚いハードカバーの卒業アルバムが目に入った。  これは……。  どうしてこの卒業アルバムがダンボールに入っているのだろうか?  嫌な思い出がたくさん詰まっている卒業アルバムなんて見たくなくて実家の押入れの奥にあるはずなのに……。  それにこの卒業アルバムは本当は捨ててしまいたかった。そんな卒業アルバムがダンボールの中に入っているなんて信じられないのだった。
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加