第四章 緑川麗奈

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わたしは卒業アルバムから目を逸らし他のことを考えようとしたけれど駄目だった。あの卒業式の嫌な思い出がジワジワと溢れてくるのだった。 あの光景は今も忘れられなくてわたしの心の中に暗い影を落としている。 「皆、卒業アルバムのクラスの個人写真のページを開いて~」 と言った田本和子は口の端をにーっと吊り上げた。その表情は意地悪そのものだった。 田本和子が何を言い出すのかとわたしはドキドキした。 すると田本和子は、「では、その卒業アルバムの個人写真の中にいらない人が一人写っていると思うんだけどその人をこの黒マジックで消そうよ!」 なんてとんでもない話なんだろかと思った。田本和子は黒色のマジックを握っている。何をするのよ。その黒マジックで何をしようと言うのだろか? わたしの心臓の音はドキドキドキドキと大きく響く。 田本和子「さあ、消すわよ」と言って黒マジックでグニグニ~とある人物の顔を塗りつぶした。 そうなのだ。ある人物とはこのわたし緑川麗奈だったのだ。 やっぱりと思ったのと同時にやめて---とわたしの心は叫び声を上げていた。 卒業するからもういいじゃない。田本和子はどうしてここまで意地悪なのだろうかと思った。 わたしはこの一年間悔しくて辛かった。ずっと耐えてきたのに。ずっと耐えてきたんだよ。
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