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さや荘に引っ越してきたばかりのこの日は早めに布団に入った。
夢の中に田本和子が出てきた。わたしは、綺麗な顔をした悪魔だと田本和子を睨みつけた。
中学校の制服に身を包んだ田本和子はふふっと笑っている。
『麗奈ちゃん、名前の交換をしようよ』と田本和子は笑いながら言った。
『ねえ、麗奈ちゃんどうして黙っているのかな? 名前の交換をしようよ』
『……嫌よ。交換なんてしないんだから!』
夢の中でまで田本和子なんかに負けてはいられないんだから。わたしは怒りをこめて田本和子を睨みつけた。
『あらあら麗奈ちゃんってば怖い顔しちゃってどうしたのかしらね? 麗奈ちゃんにはその名前は似合わないよ。だって、麗奈ちゃんは男の子みたいなんだから』
そう言って田本和子は笑う。
だけどね、和子ちゃん……。
『今のわたしは男の子みたいじゃないよ』
そうなのだ。わたしは短かった髪の毛を伸ばし今では腰近くまである。
『え? 何ですって?』
田本和子は大きな目を見開き聞いてきた。
『今のわたしの髪の毛は腰近くまであるんだよ。それに日焼けもしてなくて色白の肌になったんだからね』
わたしは、長く伸ばした髪の毛を自慢げに見せつけた。
大きな目を見開いたまま田本和子は黙ってしまった。
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