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そして、森口さんは。
「田本和子さんの名前についてどう思いますか?」と言った。
「田本和子さんの名前ですか? それがどうかしましたか?」
「いいから答えなさい! 田本和子という名前に何を感じますか?」
森口さんはわたしの目をじっと見ている。森口さんに見つめられるとまるでわたしが罪人であるかのような感覚になってくる。
「……田本和子さんの名前は昭和初期っぽい名前だと思います……だけど別に何も感じませんが」
わたしは正直な気持ちを答えた。
「あら、そうなんですね。でも田本和子さんは和子という名前を気にしていますよ」
「それは、和子ちゃんは自分の名前が古めかしくて嫌いだからですよね?」
「まあ、それもありますが……緑川麗奈思い出しなさい! あなたの罪を思い出しなさい! あなたの罪を思い出しなさい!」
森口さんは呪文でも唱えるかのように罪を思い出しなさいと言った。
「一体何のことですか? 和子ちゃんが自分の名前が嫌いだからってわたしに意地悪をしたことは分かりますよ。ですがわたしが罪を犯したって意味不明ですよ」
そうだよ。田本和子が罪人というのであれば分かるけれど、どうしてわたしが罪人なのかはさっぱり分からない。
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