序 太陽は燃えているのか!?

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序 太陽は燃えているのか!?

 太陽が燃えている。  身体の中で燃えている。  狂おしく、その情念の炎を滾らせている。  今にもこの身が焼き尽くされそうだ。  そんな思いで夕霧を・・・。 「なのに・・・」  空を見上げた。  月光が眩しかった。  嘉永六年初夏の宵である。  眼を閉じ、膝を抱えて蹲った。  瞼の中を様々な姿態が駆け抜けていく。  夜明けが美しかった。  限りなく透き通った蒼が、まだ眠りの中にいる家々を包み込んでいた。  涼風が頬を吹き抜けていく。  潮騒の音を耳にした気がした。  名を呼ばれた。 「ちゃん・・・」  夕霧が背中に頬を寄せた。  背筋一面に密生したわが剛毛を優しく愛撫してくれる。  たまらず身をかわし抱きかかえると、その足を大きく割ってのしかかった。  互いの全身がのたうつ。  正上位がなんといっても最高だと思った。  夕霧夕霧と言葉をかけ、腰を振り続けた。 「!」  爆発するものがあった。 ・・・・  西日が眩しかった。  黄金色の光りの束が格子戸から射し込んでいた。  突き出した明石の太り肉の尻を抱きかかえ、もうどのくらい突いたり捏ね回したりしていることだろう。  右に左に上に下に、充溢するエネルギーのまま自在に揺さぶり続けた。  心臓の鼓動が全身に轟いている。  背中で乱れる黒髪が滝のようだ。  なんと言っても後背位が好きだった。  明石明石と呼び続けた。 「!」  溶解していく快感に全身が蕩けた。 ・・・・  雨音がまるでメヌエットのように聴こえてくる。  いや、それは拍手のようでもあった。  血が激流となって身体中を駆け巡っている。  しっとりと突き出した椀形の乳房に指を絡め、自在に揉みしだいてゆく。  肩越しに開いた窓の向こうが見える。  瑞々しく濡れそぼつ若葉が、雨粒を弾き返していた。  汗が飛んだ。  帆をいっぱいに張って嵐の海を乗り越えていくような気分だった。  女な子は海だ。  葵の乳首にむしゃぶりつく。  舐めまわす。  熱い吐息に全身が奮い立つ。  反け反る身体、吸い付く腰。  ウネウネ、クネクネ、ヒクヒクと、葵という名の荒海がうねる。  やっぱり帆かけ船の快感こそ全てを超越している。  葵葵葵と憑かれたように唱え続けた。 「!」  迸る感動に身も心も酔い痴れた。 ・・・・  明けても暮れてもそんなことばかり繰り返した。  このまま灰になってしまってもかまわないと思った。  排他的になった。  挑戦的になった。  自堕落になった。  刹那に燃えた。  本能の赴くままに、疲れも知らずひたすらに、悶えのたうちまわった。  それで幸せだった。  生きていることを実感した。  何もかもを超越したと思った。  何かを支配したと思った。  何かを征服したと思った。  しかし、それは錯覚だった。  今、悟った。  でももう遅いかもしれない・・・・。  取り返しのつかないことになってしまったかもしれない。  そんな予感がする。  目尻をそっと拭った。  見上げた月があまりに眩しすぎる。  眩しすぎる・・・。 「ウゥ~・・・」
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