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3 ピリリッてなぁ~に!?
ボコボコにされることはなかった。
ズダボロに罵られることもなかった。
「よう帰ってきたな、」
半平太の染み入るような笑顔に迎えられた時はグッときた。
「待ってましたよ、」
重さんが抱きしめてくれた。
ついホロリなってしまった。
「なんやけったいな格好じゃのう?」
縁側に座らされたものの、居心地悪くて仕方なかった。
股間の疼きについ内股になってしまう。
爪先立て、シナをつくった様なポーズになってしまう。
「ワシ・・・・」
竜馬は深い溜息を吐いた。
落ち窪んだ眼、やつれ果てた表情、隈の下にも隈が浮き出たその面はまるで亡者か亡霊のようだと半平太は思った。
(まあ、一ト月余りを吉原でくんずほぐれつして暮らしてきたらしょうがないか)
半平太は苦笑した。
中庭の柳の葉が風に揺れている。
噎せ返るような新芽の溌剌とした匂いが辺り一面に漂っている。
竜馬のただならぬ様子に、
「金銭的な問題でも生じましたか?」
重太郎が優しい笑みを浮かべて問いかけた。
竜馬はクビを振り、
「ぜんぶ半平太の付けにしちょるから問題はない、」
と言った。
半平太が眼を剥いた。
「おまんッ!」
竜馬に向かって飛び掛りかけた腕をすかさず重太郎が摑んだ。
「とんだ連中たちに因縁でもつけられて、それで・・・・」
竜馬は、だったらなんぼええか、と言って苦笑し月を見上げた。
「美しいのう、」
ポツリと呟いた。
その姿を見て半平太が、ははぁと顎を撫で擦り、
「お前ん、好いちょった女な子に袖にされたんだべ!」
と言った。
「未熟な技巧を駆使した挙句、足蹴にされて、そんでその途端射精ばしちもうて、女な子の顔にドビバッとふりかけてしもうたんだべ、」
下品に笑い転げる半平太を無視して、
「ワシ、おかしいんじゃ・・・・」
竜馬は拳を握り締めた。
そして重太郎の澄んだ瞳をじっと見つめた。
「頭がおかしいのは別に今に始まったことやないべや、」
半平太の半畳に竜馬はブチ切れ、
「アホッ!ボケッ!カスッ!タンッ!タコッ!ダボッ!」
絶叫した。
途端に股間が疼いてピコピコという感じで身体が弾んだ。
「おかしいのは・・・・、ココなんじゃッ!」
潤む眼をカアーッと見開き、竜馬は股間を二人に指し示した。
「!?」
「?!」
二人はア然とした。
「ここが、何や知らんウジウジウズウズしてのう、ほんでもってピリリッちゅうか、ウピリッちゅうか・・・・痛いのよねん、」
重太郎と半平太は思わず顔を見合わせた。
そして同時に笑い転げた。
竜馬はその傍若無人な態度に蒼白となった。
(なんと非情な奴らじゃッ)
「・・・・」
あまりの仕打ちに言葉も失くし、竜馬はその場に崩折れてしまいそうになった。
「・・・・な、何じゃッ!二人してワシを虚仮にしくさりやがってッ!友達やないんかッ!?親友やないんかッ!?人生の先輩やないんかッ!?年若い者が困っちょったら、助けてやるのが年長者の務めとちがうんかッ!」
竜馬は半平太に飛びかかった。
しかし、あッと言う間に身をかわされ、逆にムンズと股間を鷲摑みにされてしまった。
そのときの竜馬の雄叫びと言ったら・・・・。
「ホレ、ここか、ここがピリリか、」
のたうちまわる竜馬に半平太は、容赦も同情もしない。
それを見て重太郎は腹の皮がねじ切れんばかりの勢いでさらに笑い転げた。
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