ガラス細工の恋だから

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ガラス細工の恋だから

 「花梨(かりん)の前途に乾杯!」    父の音頭で4人家族揃っての    最後の夕食。  甘く煮た魚、オクラの胡麻和え、  「角屋のケーキもあるの」  嬉々として母が揃えた晩餐。  「ビックリだよなあ、姉さんが   先輩と結婚するとは」  弟は明日私の夫になる人を  とても慕っているから  何度もそう呟いて    “この縁”を喜んで…  それは両親も同じこと。  「車で10分の所へ   嫁いでくれるとは」  「そうですよ、あなた。   いつでも会える距離なんて   有り難い御縁よ」  大学入学以来…  30歳になるまで  埼玉の故郷を離れて  関西暮らしだった私が  仕事をやめ  故郷で結婚するとは  期待0だったらしい。  私も、半年前まで  まるで考えてなかった。  半年前・・・  半年前まで  “喜ばれぬ恋”をしていた私。                       
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