前夜

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 冷めるって、いきなり来るんだと私は知った。  許せていた智也の欠点が許せなくなって、そればかりか長所が分からなくなって。なんでこの人はこうなんだろうとか、不満に思っているうちはまだいいんだと思う。  一言で言うと、疲れた。煩わしいと思うようになった。時間を智也のために割くのが面倒で、どうせこの人は変わらないからという諦めになって。声をきいているのもなんだか苦痛で、離れたくなる。そんな空気は伝染するのかな。それとも、智也もそう感じているのかな。段々二人でいるときの幸せなほんわかした空気はもうカケラもなくて、トゲトゲした呼吸さえ苦しくなるような重い雰囲気になっていた。  私、なんで智也好きになったんだっけ? 毎日頭の中で繰り返される問い。  一か月後は私の誕生日。もしかしたら、何かプレゼントの準備してくれちゃうかもしれない。それならその前に別れを切り出さなきゃ。  そう思って、明日告げることにした。「別れよう」って。
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