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「悪いな、待たせて」
部活を終えた智也はまずそう言った。
「大丈夫」
私たちはゆっくり歩き出す。
「あの、さ」
智也が遠慮がちに口を開いた。
「うん?」
「さっき、泣いてなかった? っていうか、さっきだけじゃなく、だいぶ泣いたの?」
私は驚いて智也を見た。確かに私の目は昨日泣いたせいで重く腫れていた。智也は嘘を許さないような真剣な瞳でそんな私の目を見つめていた。
私は。
「うん……」
とだけしか答えられなかった。
私たちはそれ以上言葉が続かず、また黙って歩いた。
私は言うのだろうか。別れを口にするのだろうか。
「花緒」
肩を叩かれて、私はもう一度智也を見上げた。智也の顔がにじんでいた。
「何かあるんだろ?」
不器用にタオルを差し出しながら智也が聞いてきた。
智也は何か気がついているのかな。
私は一度目を瞑って、息を吐いた。
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