名前で呼ばねぇでくだせぇよ

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 一度だけ、母を殺した理由を俺は父に尋ねた。 許せなかったからだと、彼は殺気立った目でその経緯を語った。  母が男と逃げた先は北海道の漁場で、彼女はそこで働いていたらしい。 坂浦組の構成員に連れ戻されたヨメと再会した時、父はがく然とした。 潮風吹きすさぶ極寒の地は美容に最悪で、ほとんど素顔(スッピン)の母は不細工な田舎のオバハンと化していたのである。  驚愕した後、父の心に湧き起こったのは抑えがたい怒りだった。
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