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朝食
「痛い…」
この寝台はとても痛い。クッションがないからだろう。やっぱり前の生活の方がいいなと毎日思っている気がする。けれど、もう変われない。変われるなら変わりたいけれど。彼にも会いたいし。
「ティナ、起きてるなら早くしてちょうだい。」
名前は分からないけれど、いわゆる先輩が呼びに来た。メイド服の着方がわからない。どうしよう?わからないなら先輩を呼べばいい。きっと。
「先輩、服の着方がわかりません。」
「何言ってるの?入るわよ。」
そう言って先輩が入ってきた。ちょっと怒っているような顔だが、私は別に悪くない。入れ替わったのも私が悪い訳じゃない。入れ替えた人が悪い。
「なんでそんなこと忘れるのかしら?」
「記憶がないからです」
「他のことも忘れたとか言わないわよね?」
忘れた…いや、やったことがないとは言わないが少し首を傾げた。これで言わないでもわかってくれるだろう。
「面倒ね。今日から1週間で覚えるのよ。」
「はい!」
意気込みは声だけなんて私以外知らないはず。1週間はさすがに無理だ。出来るなら、あの時の勉強だって出来たし、乗馬だってもう少し上手にできただろう。とにかく私は物覚えが良くない。
そんなことは置いといてもうすぐ朝食の時間だ。自分で作らないといけない所が一番嫌だ。
先輩に連れられて行った厨房は人がごった返していてなんとも居心地がいいとは思えない。
「今日は私たちがお嬢様のところに持っていく日なんだから早くやるわよ。」
そういうと先輩はテキパキとお盆に料理を置いていく。いつも家族で食べる時はワゴンだったからあいつは部屋で食べるのだろう。嫌な予感がして仕方がない。絶対嫌なことが起きる。これは勘だが。
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