<3・暴力>

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「あんたさ、ヒーローになりたいんだって?なんかクラスの奴にそんなこと話してたって聞いたけど」  せせら笑うように、るりはが言った。 「すっごい厨ニ病っていうか、アタマ大丈夫っていうか?そういう夢は小学生までにしておきなさいよ。ろくに仲良しでもなんでもない人間助けて自分がいじめの標的になるなんて、バカらしいと思わないの?嫌な思いをしたくなかったら、黙って見過ごせば良かったのに」 「それこそあり得ない」 「何でよ」 「簡単に人を見捨てるような奴が、いざって時に誰かに助けて貰えるわけないじゃないか。誰かを傷つけたら、その分誰かに傷つけられる。誰かを見捨てたら、その分肝心な時に見捨てられる。俺は怖がりだから、そんなのごめんだ。自分なら助けられたかも、って思って一生後悔するのも嫌だ」  彼女たちにとって、自分は理解しがたい存在なのだろうが。それはそっくり、そのまま返したい言葉だった。優理からすれば、るりはたちの行動の方が意味不明だ。  カツアゲする時、自分が逆の立場だったらと思わないのか。本当に困ってる時、誰にも助けて貰えなかったらどうしようと恐怖しないのか。相手の気持ちを思いやれ、というのは他人のためだけじゃない。いつか全部が自分に返ってきた時に、後悔しないための言葉だと優理は思うのである。 「お前たちは、誰にも助けてもらえなくてもいいの?傷つけた分傷つけられるのが怖くないの?だから平気で人に酷いことをするの?」  るりはや光が何をしてきたか、については休み時間の間にたっぷり聞いてきたことだった。本当に、優理がよく知らなかっただけで彼らの所業は有名だったらしい。地元の半グレも手玉に取ってるとか、隣の学校の不良チームを傘下に入れたとか、万引きで潰したコンビニは数知れずだとか、光に半殺しにさせた教員がたくさんいるとかなんとか。  勿論、噂にはだいぶ尾鰭がついているのは想像できるが。そういう悪評が立つほどのことを彼らがしてきたということでもあるだろう。火のないところに煙は立たないのだから。  生まれついての悪人など早々いない。基本は誰もが善人として生まれてくるはずだと信じてる優理だからこそ。気になって仕方ないのである――どんな環境が、出会いが、彼らをそうさせてしまったのだろうかと。 「……ほんと能天気。そういうお説教が一番嫌いなんだけど」  はっ、とるりはは鼻で笑って告げた。
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