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「じゃ、俺先に行きます」
「…は、え、…おい、待ってよ」
さっさと身なりを整えて、私から離れた神代くんを引き止めると「ん?」なんて平気で首を傾げるこいつの神経が本当にわからない。
一人、会議室の机の上で乱れる私を頭の先から足先までじろりと見渡した神代くんはにっこり可愛い笑顔で笑い、
「…聖奈さんも、サボってないで仕事戻った方がいいですよ?」
なんて、流石に怒っていいよね?すでに怒っているのだけれど。
「…っ、あ、あんたねぇ?!誰のせいで…」
「ふふ、俺を無視した聖奈さんのせいでは?」
「は?何でもかんでもそんな風に…」
言い返そうとした私に「しっ、」と口元に人差し指を立てた彼。
素直に黙ってしまった自分が悔しすぎる…。
「聖奈さんは“馬鹿”ですか」
「は?!」
「これは、“お詫び”という名の“お仕置き”だよ?聖奈さんが喜ぶことしたら意味ないじゃん」
「、」
押し黙る私に満足したように目を細める。
「ふふ、このままムラムラしたまま…仕事頑張ろうね?」
「この…どっ変態男…っ!」
はだけたトップスをクロスにした腕で隠して、最大の憎悪を込めて叫んだのに…
少しも反省する素振りを見せずにベーッと舌を出した彼はイタズラの成功した子どもみたい。
「続きがしたいならいつでもウチに来てね?思う存分してあげる」
「…死ね!一生無視してやる!」
「了解、次回コピー機前で犯します。お楽しみに。」
「…っ!」
真顔で衝撃的なセリフを置いて…荷台を押して会議室から出て行った神代くんを見つめる私は放心状態。
「な、なんなんだ…あいつは、」
ぶつぶつも呟きながら身なりを整えて、しばらくたってから…深く深くため息をついた。
「ああもう…続きして欲しかった、なんて…
私どうかしてるよ…。」
生意気で掴み所のない彼。
意地悪なのに優しくて、いつでも適当なのに時々真面目な顔をする。
まるで蟻地獄。
足を突っ込んだ瞬間、引き摺り込まれて振り回されて…
あんな危険な沼にはハマれない。ハマる精神なんて私は持ち合わせていないのに…
「はあああ、神代くんのばかぁあ、」
会議室に一人。
その場にうずくまった私の言葉がやけに部屋に響き渡った。
気まずい月曜日
ーendー
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