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この気持ちは何
「いらっしゃい、聖奈さん」
「…お邪魔、します。」
「迎えに行こうと思ってたのに。早かったね?」
インターホンを鳴らしてすぐに出てきた神代くんは、職場と違ってニコニコとご機嫌な様子。
少し気恥ずかしくてモジモジする私の手から食材の入ったマイバッグを取り上げると、「早く、入って?ケーキ買ってきてるから一緒に食べよ」と私を部屋へと招き入れる。
週末、11時ちょっとすぎ。
2回目となる彼の部屋で…お出かけ用のパンプスをきっちり揃える。
先にリビングに向かった神代くんの跡を追って部屋の中に入ると、マイバッグに入っていた食材をテキパキと冷蔵庫に片付けていた。
「あ、ありがとう」
「いいえ、逆に来てくれてありがとう」
「…、」
嬉しそうに笑って頭を撫でられたら、…調子が狂うじゃないか…。
照れ隠しに唇を尖らせて、「あんたが…来いって言うから、」と文句を言うと、ふふっと笑ってお決まりのようにスマホを目の前にかざす。
「便利だよね、弱み握るって。」
「…」
「なんでも思い通りになって楽しい」
「っ、」
スマホを持った手を下ろすと同時、彼の唇が頬に触れ、完全に不意打ちを喰らった。
触れたところが爆発的に熱くなって、両手でそこを押さえながら彼を睨むが、
茶色がかった綺麗な瞳がムカつくほどにノーダメージで見つめ返してくるから、まんまと狼狽えてこちらから目を逸らしてしまう。
「…、この…犯罪者」
苦し紛れにボソッと反抗したって、
「ふふ、嫌がり方がどんどん下手になりますねー、聖奈さん」
「…はぁ?」
この後輩は絶対に勝たせてくれない。あいも変わらず生意気だ。
なぜ、私がこいつの家に通い妻の如く…
いや、うそ。通い妻とか…断じてそういうのではないんだけど…ね?
とにかく、休日の昼間っから、買い物袋片手にノコノコやってきたかといえば…
それは、昨日の金曜日に遡る。
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