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「今日は机片付けるだけって言ってたじゃないですか!それなのにこんな騒ぎ起こして…、処分重くなっても知りませんよ?!」
呆れた声でそう伝えられたって、「やめろ…っ!離せ!」と、本当に気が狂ってしまったみたいに騒ぎ立てる井上さんを大人の男3人が羽交い締めにして連行する、異様な光景。
「神代くん、大丈夫?!」
廊下が無人になって、すぐ神代くんに声をかけた。
何食わぬ顔でこちらを向いた彼の頬には…ペンを走らせたみたいな赤い線が一筋。
目を見開いて、「…っ、…血、」と狼狽すると、今気がついたと言わんばかりに指先で頬に触れ、「あ、」と間抜けな声を上げる彼。
「ど、どうしよ…ごめん、わた…私のせいで…」
「こんなの、ただのかすり傷ですよ。落ち着いて聖奈さん。」
「…でも、い…痛い、でしょ…どうしよ…」
ただでさえ心が不安定になっていたところ、自分のせいで神代くんの綺麗な顔に傷をつけてしまった事があまりにもショックで、頭が完全に真っ白になる。
「大丈夫だから、テンパりすぎ。ほら、深呼吸しよ。」
柔らかく微笑んで私の肩を抱いた神代くんに促されて、彼のいう通り二人で一緒にスーハーと深い呼吸を繰り返せば、次第に脳に酸素が回り始めた。
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