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正直、神代くんが守る、と言ってくれて…すごく心強かった。
さっき井上さんに絡まれた時、もしも私一人だったら…と、考えただけで背筋が凍る。
私は決して“守りたくなるような可愛い女の子”なんていうタイプではなくて…。
「一人で生きていけそう」とか、「俺がいなくても困らないよね」とか、男の人に言われるのはそんなことばかり。
いつしか私自身も自分のことをそういう人間なんだ、と思うようになっていたけど、本当はずっと…
守りたくなるような女の子、にも…
守ってくれる男の人、にも…、憧れていたんだ。
でも、長年染み付いた考え方は根強い。
どうしても、私と井上さんの問題に神代くんを巻き込むのは申し訳ないと思ってしまう。
月曜のことも、先程のことも…神代くんは気にするなというけれど、やっぱりそういうわけにはいかない。
守って欲しい自分と、迷惑をかけたくない自分が同居して。
どういう行動をとるべきか、考えあぐねては、曇る表情で俯く私。
そんな私に、呆れたように短いため息をついた神代くんは、
「でも、まあ…人を頼るのがヘッタクソな聖奈さんですからねぇ〜」
と…嫌みたらしく嬲ってくる。
ほとんど反射で「は?」と眉を顰めて彼を見上げると、ふっと笑って私の眉間の皺をツンっと指先でつつく。
「…っ、」
「どうせ、ただでは守らせてくれないんでしょ?」
「…」
本当に、こいつはエスパーか何か?
またまたバツが悪くて目を逸らしつつコクリと頷いた。
「…せめて、何かお礼させて欲しい。」
ぼそっと呟いた私に「お礼、ねぇ…」と口元に笑みを浮かべながら顎に手を当てる神代くん。
「…ほら、例えば、欲しいものとかない?食べたいものでもいいよ!
なんでも奢るし…、」
「んー、そうだなー」
「あ、でも…神代くん、食事はお礼にならないんだっけ…?」
「え?」
バイトの女の子にこの間そう言って食事を断っていたのを思い出し、そう発言すれば、キョトンとした瞳がこちらに向く。
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