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「神代くん、苦手な食べ物とかある?」
「聖奈さん作ってくれるならなんでも好き」
「それ、2回目。作ってから食べれないとかナシだからね?」
「はーい。」
はーい、って…子どもかよ…。
ソファーに膝を立てて座りながらニコッとする彼がいちいち可愛くてムカつく。
冷蔵庫の中を覗くと、様々な調味料が揃っていた。
野菜も結構豊富に揃っていて…冷凍庫にはお肉もお魚だって保存されている。
「調味料はあるから買ってこなくて良いよ」って神代くんの言葉を信じてやってきたものの、これじゃあ何も買ってこなくても良かったんじゃない?
「ねぇ、このほうれん草使って良い?」
「はい、適当になんでも使ってください。フライパンとかも下の棚にしまってあるんで適当に…って、やっぱり俺も手伝う?」
「いや、それも2回目。私のことは気にしないで座ってなさいってば」
ずっとこちらに視線を向けたままの神代くんは構ってちゃんな犬みたい。
普段は完全に気まぐれな猫なのに…家の中では犬っぽいなんて、…本当にいい具合で母性本能をつついてくるから困る。
それにしても、これだけ整理整頓されたキッチンに…材料豊富な冷蔵庫、なんて…。
…女の影ありまくりじゃない?
モヤっと胸に広がる感情。ただの後輩にだったら覚えるはずのない気持ちに…ものすごく自分が嫌になる。
会社の後輩と付き合えるわけない!…なーんて、ここ数日ずっと自分に言い聞かせてたくせに…
ノコノコ自宅に押し寄せて、「嫌いなものなーい?」「手伝いなんていいから休んでおきなさーい?」なんて、お姉さんぶって世話をやき、
人の家の冷蔵庫を隅々チェックした上、女の影を探してモヤつくアラサーって…。
自分、痛すぎるのでは…?
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