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「フォークでいい?箸派の人?」
「フォークで。箸派っているの?ていうか、そのくらい自分で出すし」
「…、…いいよ私今立ってるし。フォークってここでしょ?」
立ち上がろうとする神代くんを制止して、炊飯器の横に置かれていた箸入れからフォークを二つ取り出した。
ついでに食器棚から取り出したコップ二つを片手で持つと、「神代くん、何飲むの?」と冷蔵庫の前から声をかけた。
「お茶」という返事を聞いてから冷蔵庫を開け、2リットルのペットボトルを空いている方の手で持って再びリビングへ。
「はい、フォーク。」
「ふふ、場所把握するの早いね。教えてないのに」
「だって綺麗に整頓されてるから、初めてでも使いやすい…って、
ごめん、勝手にうろちょろしてウザかったよね?」
ハッと、自分の痛さ加減に気がついて目を広げると、神代くんは柔らかく笑って顔を横に振った。
「なんか、奥さんみたいだなって見てた。」
「…っは、お、奥さん…って、」
思わぬ言葉に真っ赤になる。
「まだ彼女でもないのに…奥さん…って」
「あ、まだってことは、そのうちなってくれるんだ?俺の彼女」
「…っ、!
は、そんなこと言ってない!…揚げ足を取らないで!」
「ふ、聖奈さんの言葉ひとつひとつに翻弄されてるだけですよ。ああ、また振り回されただけか。残念」
「…、」
口の端を上げて余裕そうに笑う彼。
振り回してるのはどっちよ、って…反論したかったけど、これ以上口論を続けても勝てる気がしなかったから口を尖らせてパスタに視線を戻した。
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