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「聖奈さん、水飲みますか?」
「…、あ…りがとう」
上半身裸でベッドの縁に腰掛け、ペットボトルをこちらに差し出す神代くん。
どうしても先ほどまでの激しい行為を思い出して赤面してしまう私は、半分布団に隠れたままそれを受け取った。
キャップを外して、枯れてしまった喉に水分を流し込んでいれば、ギシッとベッドが軋む音がする。
私の座っているすぐ近くに手をついて顔を近づけてきた彼。
むせそうになりながら、目を泳がせると「ね、聖奈さん」と低い声が私を呼ぶ。
観念して合わせる目と目。
何度目かの真剣な双眼が私を捉えると、ゆっくりと口を開いた。
「改めて言います。好きです。付き合ってください。」
「…っ、」
「適当に抱いた気ないです。責任取りたくて抱いてます。だから…」
ペットボトルを持つ私の手に神代くんの大きな手が重なって。
「ね、付き合おう。聖奈さん。…元カレなんか全部忘れさせるから」
「…っ、」
「答え、今欲しいです。」
甘えるような瞳に…絆される。
神代くんなら…もしかしたら…って思う。
…でも、ーー
『俺、結婚することになったから。』
「…っ、」
「…聖奈、さん?」
前に進みたいと望んだ瞬間、あの日の光景がフラッシュバックする。
怖い、怖い、怖い…
顔を上げれば目の前にいるのは神代くん。
飄々としているけど、いざという時いつも助けてくれる。少女漫画のヒーローみたいな彼。
真っ直ぐで、何度突っぱねても何故だか私を求めてくれる彼が本当は嬉しくて。
…でも、そんな彼が…私から離れて行った時…
私は耐えられるのだろうか?
付き合ってから…いつもみたいに上手くいかなくなって…嫌いになられたら…終わってしまったら…
私は今度こそ涙が枯れるほど泣くよ?
今、こんなに私に真っ直ぐにぶつかってくれる神代くんを知っているからこそ…私から遠ざかる彼の背中に耐えきれずに…きっと泣き叫ぶ。
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