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ジリジリと近寄ってくる神代くん。私は表情を引きつらせて後ずさる。
「聖奈さん、キスしたい」
「…む、むり」
どストレートに言われても、OKするわけがない。
「あんた、猿か。二人きりになった途端にそんな…」
「んー、どうとでも言って?好きな人が触れる距離にいて、我慢できるほど大人じゃないんです、俺。」
ぺろりと舌なめずりをするコイツは本当に危険。
初めて繋がったあの日から、事あるごとに家に呼ぶし、職場でも人目のないタイミングを盗んで、ちょっとした悪戯でもするように触れるだけのキスをしてくる。
あんたはいいよ?私にそんな悪戯を仕掛けたって、ポーカーフェイスですぐにバリバリ仕事できるんだから…
でも、私はものすごい動悸に襲われて、火照る頬の熱が冷めるまで自分の席に戻れないんだから…仕事に非常に支障が出るわけで。
「あんた、やってること井上さんと変わんない…からね?!」
「えー、それは心外だわ。じゃあ、毎回満更でもない可愛い顔する聖奈さんも同罪ね?」
「は、は?!誰が…満更でもない…顔を、」
「ふふ、今もしてるよ、満更でもない顔。」
「っ、」
顎を掴まれてクイッと上を向かされた瞬間、窓際の壁に背中が触れ、完全に逃げ場を見失う。
「すぐに顔赤くするのも、恥ずかしそうに目を逸らすのも、」
「…、」
「その後に真っ直ぐこっち見つめてくるのも、全部俺のこと誘ってるとしか思えないんだよね。」
「…そ、そんなわけ…」
「口、開けて?聖奈さん」
「…んぅ、」
近づいてくる綺麗な顔。低くよく響く声が鼓膜を揺らすと、不思議と従わずにはいられなくて。
すぐに差し込まれた舌が私の舌に絡みつく。
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