君とお部屋探し

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「…」 目を逸らすこともせず、真っ直ぐに。 あまりに嘘のない目に、瞬きさえ忘れてしまうほど。 そんな顔で言われたら、どうやって返せばいいか分からないじゃない。 「なに、バカな…ことを、」 「…」 ようやく、顔を逸らしてポソリと吐き出すと、 「バカなこと、じゃねーよ」 「…、」 「割と大真面目。」 繋いでいない方の手で顎を掴まれ、無理やり目を合わせられる。 悟られたくなくて顔を逸らしたのに、顔を上げれば隠しようのない動揺。 揺れる瞳、染まる頬、…私のこの表情を、彼がどう捉えるのか…考えるのも苦しい。 「ね、聖奈さん…」 「っ、」 脳内を見透かすようなその目が…怖くて、 …なのに、見惚れるほど、美しくて、 「俺のこと、…もう、好きでしょ?」 「…っ、」 彼のセリフが、胸に響いて、身体中に巡って… 身体中が、熱くなる。もう…「そんなわけない」なんて、嘘はつけなかった。 「俺は、聖奈さん諦めるつもりない。今は待つけど、引くことはないよ?今後、一生」 「…かみ、しろ…くん、」 「いつか、絶対に俺のものにする。だったら、今のうちから一緒に住んだ方が効率的だ。そう思わない?」 「待って、…そんな、簡単には、」 「聖奈さんは頭で考えすぎ。さっさと俺にすればいい。」 「っ、」 また、そうやって…強引に。私の心を掻き乱す。 いつも気怠げな彼が、全力でぶつけてくる愛情は…嬉しいけれど。 「無理、だよ…」 「…」 私の治療中の心臓は…、そんな彼についていけないんだ…。
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