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「怖いの、優しかった人が…変わっちゃうの見るのが。
好きになった人に、…な、殴られたくない、浮気されたくない、…っ、…裏切られたくない…、」
「聖奈さん、分かった…ごめん、もう…」
「無理、…怖い、信じれ、ない、裏切られるの、嫌、なの…!もしまたそんな事になったら、…私、は…、わたしっ、」
「…悪かった、…俺が、悪かったから…っ、ごめん、落ち着いて聖奈さん!」
「…っ、」
彼の力強い腕に抱きしめられて、ようやく我に返る。
全身に伝わる彼の温もりに、ゆっくりと冷静さを取り戻して…荒れた息を整えながら、頭からサーッと血の気が引いた。
…もう、こんな面倒くさい女、やめておけばいいのに。
格好良くて、意地悪だけど心根はすごく優しい…あんたはさ、…4つも年上の、私みたいなアラサー女には勿体なさすぎるよ。
心が張り裂けそうに痛い。彼に、こんな弱い姿を見られたことが…ものすごく、恥ずかしいし、辛い…。
やっぱり…うまく、はぐらかして、こんな醜い感情は…隠すべきだった。
絶対に嫌われた。こんな面倒くさい女…流石にもう呆れたでしょ?
って、そう…思ったのに。
「ごめん、ごめんね、聖奈さん。」
「…」
「また、嫌なこと思い出させた。」
震える肩を抱く神代くんは、子どもをあやすみたいにポンポンと背中を叩く。
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