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「もーーうしわけありません!かなりお待たせしてしまって…!」
スライディング土下座でもしそうな勢いで部屋に舞い戻ってきた不動産屋さんに慌てて立ち上がって身なりを整える。
私の後にゆっくりと立ち上がった神代くんは、トップスの裾をツンっと引っ張って私の耳に口を寄せた。
「ね、ここにしなよ。新居。」
「え?」
突然の指示に疑問の声をあげると、すぐさま、
「元カレと住んでた部屋に聖奈さんが住んでるの、死ぬほどイヤ。そんな部屋早く出て?」
と甘えた声が耳に舞い込んで。
軟弱な心臓が、最も簡単にキュンと鐘を鳴らす。
「それに、あんなエッチなことしておいて住まない、とか。次の人可哀想だしね。」
「っ、」
せっかく可愛かったのに、ふっと笑いながら最後にそんなクソなことを言って離れていった彼。
あとの選択は私に託された。
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「良かったね、新居決まって。」
「そうね、誰かさんのおかげで…ね」
「はは、そんな褒めなくていいよ。」
「褒めてないよ?」
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