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「ごめんね、急に一緒に行くことになってバタバタさせたでしょ?」
時間ぴったりに集合場所に到着し、申し訳なさそうに笑う杉本課長に「いえいえ!」と首を振る。
隣に立つ神代くんに視線をやると、愛想のかけらもない真顔のまま…杉本課長を観察するように視線を送っていて。
「ほら、神代くん…!挨拶して?」と、思わず保護者のように声をかけた。
「システム開発部の神代です。」という淡白すぎる自己紹介に「どうも、営業一課の課長になった杉本です。よろしくね!」と快活な笑顔を見せる杉本課長。
技術畑と営業畑の性格の違いを示す見本のような構図だ。
「神代くんも悪かったねー?急に。」と再び謝る課長に対して、「…いえ、はいまあ…そうっすね。」と不服そうに返すこいつ、神経図太すぎる…。
慌てて「こら、神代くん!」と肩口を叩くと、反応乏しくボケッとした瞳が私に傾く。
もう、本当こいつは…
変わらないというか、変えない、というか…
取引先だろうが、上司だろうが自分のペースを崩さない彼に呆れつつ、なぜか私が頭を下げた。
「す、すみません、杉本課長!神代くん絶賛人見知り中で…、」
「…は、別に人見知りとかじゃ、」
「黙れ、謝れ、頭を下げろ。」
「…、」
彼の胸ぐらを掴んで無理やり引き下げると、渋々「失礼、しました…」と低い声を出す神代くん。
そんな私たちの掛け合いを見て、杉本課長は怒りもせずにこやかな表情であははと笑った。
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