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神代くんが生意気な後輩で、私がそれに対してムキになる馬鹿な先輩っていうのは誰の目から見ても明白で。
ここで必死に否定し続ける方が逆に怪しくなる。
幸い、それに気が付かないほど私は馬鹿なわけではなく…。
「課長…ほんとすみません。神代くん、いつもふざけてばっかりで…」
ここでは生意気な後輩の愉快なおふざけとして納めるのがきっと得策だ。
げんなりした顔で杉本課長に頭を下げると、やっぱりにこやかな表情。
「ふふふ、漫才見てるみたいで楽しかったよ?」
なんて、どこまでいい人なんだ。この人は…。
高身長でスタイルも良く、常に朗らかな表情を作る顔立ちは、課内の女性陣が見にくるほど整っていて。
正直、今までの経験上、「絶対何か裏の顔があるんだ…」なんて値踏みしていたのに、今のところ性格まで良さそう。
お馬鹿な後輩に荒れ狂う心を素敵な上司の笑顔で癒しつつ、
「先輩なのに揶揄われてばかりで…お恥ずかしいです。」と、念を押すように神代くんとの仲を誤魔化す。
「全部俺のせいみたいに言わないでくださいよ。」
「いや、全部あんたのせいでしょうが。」
「揶揄いがいのある秋月さんも悪いかと。」
「うるさい、もう黙って。
課長!もう行きましょう!こいつに構ってたら乗り遅れます!」
これ以上爆弾発言が出る前に、彼の言葉を遮って必死の形相で課長に声をかける。
ゆったりと腕時計に目をやった課長は「そうだね、そろそろ行こっか」と笑うと踵を翻して私たちに背を向けた。
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