リバース

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 古い給水塔の上から空を見上げる。暗闇に浮かぶ星の光が目の奥に突き刺さる。夜風は冷たいはずなのに何も感じることができない。心も体も、この世界を拒んでいる。  それでも読まなければ。懐からくしゃくしゃになった封筒を取り出す。「ヴァイスへ」と大きく書かれた文字すら憎い。血で汚れた、最後の手紙。  中身はだいたい想像がつく。どうせ、俺の力不足だ、お前は生きて幸せになれ、とか無責任に書いてあるんだろう。  あいつが最期に伝えたかった言葉を、僕は知らなくてはならない。でもこの手紙を読んでしまったら、お前の死を認めることになるような気がする。  ヘルトの血に自分の指を重ねると走馬灯のようにあいつのと記憶がめぐる。
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